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​住所・居所・現在地

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住所

​民法上、各人の生活の本拠である場所(民法第22条)。

およそ法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合、反対の解釈をなすべき特段の事由のない限り、その住所は各人の生活の本拠を指す(最大判昭和29年10月20日民集第8巻10号1907頁)。

住所の特定

住所所在地の認定は各般の客観的事実を綜合して判断すべきものであつて、…特定の場所を特定人の住所と判断するについて、その者が間断なくその場所に居住することを要するものではなく、又単に滞在日数の多いかどうかによつてのみ判断すべきものでもないけれども、…客観的施設の有無によつてのみ判断すべきものでもない(最判昭和27年4月15日民集第6巻4号414頁

選挙権の要件としての住所は、その人の生活にもつとも関係の深い一般的生活、全生活の中心をもつてその者の住所と解すべく、…私生活面の住所、事業活動面の住所、政治活動面の住所等を分離して判断すべきものではない最判昭和35年3月22日民集第14巻4号551頁

法人の住所は、主たる事務所又は本店の所在地(一般法人法第4条、会社法第4条)。

​居所

生活の本拠(住所)とはいえないが、多少の期間継続して居住している場所。民法上、住所が知れない場合、日本に住所を有しない場合には、居所が住所とみなされる(民法第23条)。

仮住所

当事者がある行為について住所に代わるべきものとして選定した場所。仮住所が選定されたときは、その行為に関しては、その場所が住所とみなされる(民法第24条)。

現在地

人が現時点において存在する場所。刑事訴訟法上、裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所、居所若しくは現在地によるとされている(刑事訴訟法第2条1項)。

刑事訴訟法第2条1項にいう「現在地」とは、公訴提起の同時、被告人が現在する地を指称し、これに現在する事由の如何を問わない最決昭和30年5月17日刑集第9巻6号1065

現在場所

証人等の事件の関係者が現在いる場所。例、「裁判所は、証人の…現在場所でこれを尋問することができる」(刑事訴訟法158条1項)

​現場

ある事象又はある行為についての現実の場所。例、「逮捕の現場」(刑事訴訟法220条1項)等。

事務所

人又は法人等の事業活動が行われる場所。主として技術的な業務の運営をつかさどるところを「事業所」、事務的な業務の運営をつかさどるところを「事務所」と使い分ける用法もある(鉱業一九〇、電気一〇七)。商法、会社法等の「営業所」や民法の「事務所」は、単に事業活動が行われる場所(工場、倉庫等)ではなく、一定の独立の決定権を有する責任者の所在する場所をいう。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

事業所
事業が行われる拠点となる場所。主たるものであるか従たるものであるかを問わず、およそある事業の内容である活動が行われる一定の場所。「事業場」が、通常、具体的、物的な存在としての場所を意味するのに対し、「事業所」はその機能の面から捉えた場所を意味する。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

​事業場

「事業所」とほぼ同義。「事業所」が、抽象的な機能に重点をおいた表現であるのに対し、「事業場」は具体的な物的施設に着目した場所を意味する。狭義では、「工場」に対して、物の製造又は加工以外の事業を行う場所を意味する。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

​工場

一般に、物の製造又は加工の事業のために使用する場所及び施設。営利性の有無は問わないが、一定の事業として物の製造又は加工のために継続的に使用され、また、必要最小限度の工作物が設置されていることを要すると解される(薬六九①、工抵一)。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

営業所

  1. 商人の営業活動の中心たる場所。営業活動についてその指揮が出され、その結果が統一され、外部的にもその中心として現れる場所で、ある程度の継続性をもつ。住所におけるとほぼ同様の法律上の効果が認められており、債務の履行場所(商五一六)、商業登記の管轄登記所(商登一の三)、普通裁判籍(民訴五)等について標準となる。一個の営業につき数個の営業所がある場合は、主たるものを本店、従たるものを支店という。

  2. 「事務所」、「事業所」等の語と並べて、広く営業の行われる場所を意味する。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

​【参照条文】

(住所)

民法第22条 各人の生活の本拠をその者の住所とする。

(居所)

民法第23条① 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。

② 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法を定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。

(仮住所)

第24条 ある行為について仮住所を選定したときは、その行為に関しては、その仮住所を住所とみなす。

(住所)

会社法第4条 会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする。

(住所)

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第4条 一般社団法人及び一般財団法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。

(普通裁判籍による管轄)

民事訴訟法第4条① 訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。

② 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。

③ (略)

④ 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。

⑤〜⑥ (略)

【土地管轄】

刑事訴訟法第2条① 裁判所の土地管轄は、犯罪地又は被告人の住所居所若しくは現在地による。

【裁判所外における証人尋問】

第158条① 裁判所は、証人の重要性、年齢、職業、健康状態その他の事情と事案の軽重とを考慮した上、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、必要と認めるときは、裁判所外にこれを召喚し、又はその現在場所でこれを尋問することができる。

【令状によらない差押え・捜索・検証】

第220条① 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、第199条の規定により被疑者を逮捕する場合又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。第210条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。

一 人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。

二 逮捕の現場で差押、捜索又は検証をすること。

(立入検査)

電気事業法第百七条 主務大臣は、又は営業所事務所その他の事業場に立ち入り、物件を検査させることができる。

​【参考文献】

法令用語研究会編『法律用語辞典』(有斐閣,第4版,2012年)「住所」、「居所」、「仮住所」、「現在地」、「現在場所」、「現場」

高橋和之他編『法律学小辞典』(有斐閣,第5版,2021年)「住所」

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