​故意・過失​

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故意

  1. 罪を犯す意思のことで、犯意ともいい、犯罪の基本的要件の一つ(刑三八)。罪となる事実を認識し、かつ、その実現を意図又は認容することを内容とする。

  2. 私法上、自己の行為から一定の結果が生じることを知りながらあえてその行為をすることを意味し、過失とともに、不法行為を成立させる主観的要件をなす(民七〇九)。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

過失

一定の事実を認識することができたにもかかわらず、不注意でそれを認識しないこと。故意に対する。理論上、不注意の程度によって重過失軽過失とに分けられ、また、注意義務の種類によって抽象的過失具体的過失とに分けられる。

  1. 私法上は、故意と並ぶ不法行為の成立要件の一つとなるほか、取引法上の保護が与えられる要件としても用いられている(民七〇九等)。

  2. 刑法上は、特に過失を処罰するとされている罪について責任要件となる(刑三八①等)。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

ー故意の分類ー

確定的故意

故意のうち、犯罪事実の発生を積極的に意図したもの。故意の典型。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

 

不確定的故意

犯罪の成立要件の一つである故意とは、事実(結果)を認識し、かつ、結果の発生を認容することであるが、事実(結果)の認識が不確定的であるか、結果の発生に対する認容が不確定的な場合。確定的故意に対する。
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ー犯罪の成立に必要な故意の内容ー

認容説​

犯罪の成立には、原則として、故意が必要であるが、故意とは、罪となる事実を認識し、かつその実現を意図するか、少なくとも認容する場合をいうとする考え方。学説上有力であり、認識説に対立する。

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認識説

犯罪の成立には、原則として、故意が必要であるが、故意とは犯罪事実の認識だけで足りるという考え方。表象説ともいう。認容説がこれに対立する。

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ー故意の限界ー

未必の故意

犯罪事実の実現は不確実であるが、それが実現されるかもしれないことを表象し、かつ、実現されることを認容した場合ないしは最終的に結果が発生すると考えながら行為に出た場合に、「未必の故意」があるとされる。不確定的故意の一つで、確定的故意に対する。認容説によれば、認容することにおいて「認識のある過失」と区別される。
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​認識のある過失

行為者が犯罪事実の表象はもったが、その実現についての認容を欠くためないしは最終的には結果は発生しないと考えたため故意が成立せず、過失とされるもの。犯罪事実の表象そのものを全く欠いた過失を「認識のない過失」という。

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ー​故意の阻却ー

錯誤

人の認識したこととその認識の対象である客観的な事実とが一致しないこと。

刑法上は、故意の阻却に関して問題となる。事実の錯誤(客体の錯誤、方法の錯誤、因果関係の錯誤)と法律の錯誤とに大別して論じられる。

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ー錯誤の分類ー

事実の錯誤

犯罪の構成要件に該当する客観的事実に関して錯誤があること。それによって犯罪事実の認識を欠くことになるときは、故意が阻却され、犯罪は成立しない。法律の錯誤に対する。

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法律の錯誤

自己の行為が法律上禁止されていることを知らないこと、又は禁止されていないと誤信すること。事実の錯誤に対する。法の不知は故意を阻却しない(刑三八③)が、自己の行為が許されるものと誤信したことに相当の理由がある場合には罪にならないとする説が有力である。

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違法性阻却事由の錯誤

違法性阻却事由の内容たる事実が存しないにもかかわらず、行為者がこれを存するものと誤認して、あるいは違法性阻却事由の要件や限界を誤信して行為すること。誤想防衛や誤想避難がその例。その取扱いについては学説上争いがある。

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​ー事実の錯誤の分類

客体の錯誤(目的の錯誤・目的物の錯誤)

いわゆる事実の錯誤の一つ。例えば、ある対象を憎むべき人物Aであると信じて発砲し、これを殺したところ、実は別人(B)であったとか、あるいは犬であったとかの場合における行為者の錯誤をいう。通説たる法定的符合説によれば、前者についてはBに対する殺人罪を構成するが、後者については器物損壊罪の故意はないものとされる。

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方法の錯誤(打撃の錯誤)

刑法上の概念で、犯人がAを殺害する目的でAに向けてピストルを発射したところ、近くにいたBに命中してBが死亡した場合のように、犯人が攻撃を加えた客体とは別の客体に結果が生じた場合。Bに対する殺人の故意が認められるかが問題となり、判例・通説はこれを認める。打撃の錯誤ともいう。

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因果関係の錯誤

行為者があらかじめ考えたのとは異なった因果関係の経過をたどって予期した結果が発生した場合をいう。刑法では、この場合、行為者の予見した因果の経過と現実の因果の経過とが相当因果関係の範囲内で符合している限り故意は阻却されないとするのが通説。なお、行為者が、ある犯罪的結果を目指して行った当初の行為によってはその目的は遂げられず、目的を遂げたものと誤信して行った第二の行為によって当初予期した犯罪的結果が実現された場合も、因果関係の錯誤に属するが、その取扱いについては諸説があり、第一の行為と第二の行為とを一体として捉え、その間の因果的経過が相当因果関係の範囲内にあれば故意の既遂犯を認め得るとするのが通説。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

​ー法律の錯誤の類型

当て嵌めの錯誤(包摂の錯誤)

自己の行為が客観的には犯罪構成要件に該当するにもかかわらず、法の不知又は独自の法理解によって該当しないと判断すること。例えば、窃盗罪に当たるべき行為を遺失物横領に当たるにすぎないと誤解するなどをいう。この錯誤はいわゆる法律の錯誤に当たり、故意の成立を阻却しない(刑三八)。

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非刑罰放棄の錯誤

法律の錯誤のうち、刑罰法規でない法規に関する錯誤。かつて、刑罰法規の錯誤は故意を阻却しないが、非刑罰法規の錯誤は事実の錯誤と同様に故意を阻却するという考え方があった。

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構成要件の錯誤と禁止の錯誤ー

構成要件の錯誤

ドイツ連邦共和国(かつての西ドイツ)における刑法理論上の概念で、構成要件の客観的要素に関する錯誤をいい、従来理論における事実の錯誤に相当する。禁止の錯誤に対する語。例えば、物の他人帰属性に関する錯誤は法的評価に関わる錯誤であるのに故意の阻却事由になるという結論を導くためには、従来の法律の錯誤事実の錯誤の区別は紛らわしいとの問題意識に発するが、我が国では、そのような錯誤も事実の錯誤であるとの結論に混乱はなくこのような新しい概念を持ち込む実益に乏しい、との考え方が有力のようである。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

禁止の錯誤

行為者が、錯誤によって、その行為が法律上許されないものであることを知らないこと。一般的には「法律の錯誤」と同義で用いられているが、特に構成要件の錯誤と対比して、違法性阻却事由に関する事実の錯誤を含む意味で用いる場合もある。

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ー​過失の分類ー

 

​軽過失

善良な管理者の注意を欠くこと。抽象的軽過失ともいい、これを著しく欠いている重過失に対する。普通、過失といえば軽過失を意味する。

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​重過失

重大な過失の略。

  1. 民法上は、善良な管理者としての注意義務を著しく欠く場合をいう。

  2. 刑法上は、普通人の払うべき注意を著しく欠くことをいう。この場合には、一定の犯罪について刑が加重される。

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抽象的過失

その人の属する社会的地位、従事する職業などに応じて一般的に要求される注意を欠く過失。具体的過失に対する民事法上の概念。この注意の懈怠の程度によって、軽過失重過失に区分される。

[有斐閣 法律用語辞典 第4版]

具体的過失

「自己のためにするのと同一の注意」(民八二七)とか「自己の財産に対するのと同一の注意」(六五九)などのように、各人の能力に応じた注意を欠くこと。

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