争い・紛議・争議・争訟
争い
通常は、私法上の事件において当事者間の意見や主張などに不一致がある場合をいう。争いの対象は、法律問題に限らず事実問題を含む。民事訴訟判決の中で「当事者間に争いのない事実」というように用いられる。法令上は、「請求の一部について争いがない場合」(民訴七五②)、「引渡ニ関シテ争アル場合」(商五八六①)というように用いられている。
[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
紛議
ある事項について当事者間の主張が一致しないで争いになること。例、「弁護士会は、弁護士の職務…に関する紛議につき、…調停をすることができる」(弁護四一)。
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争議(労働争議)
労働関係調整法上は「労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生してゐる状態又は発生する虞がある状態」と定義されている(六)。労働関係調整法に規定する労働委員会による各種の調整手続は、この意味の労働争議の自主的解決を助成することを目的とし、労働争議の存在が同法による斡旋(あっせん)、調停、仲裁開始の要件となっている。
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争訟
広義では、訴えを起こして争うこと。狭義には、法律上の権利義務若しくは法律関係の存在若しくは形成に関して対立する当事者間の具体的な争い又はその争いに対して公の裁断を下す手続を指す。例、「両議院は、各〻その議員の資格に関する争訟を裁判する」(憲五五)や「裁判所は、…一切の法律上の争訟を裁判し」(裁三①)。
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競争
複数の事業者が第三者との取引を行うために互いに競うこと。独占禁止法では、複数の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、その事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく、同一の需要者に同種、類似の商品や役務を供給し、若しくは同一の供給者から同種、類似の商品や役務の供給を受けること又はこれらの行為をすることができる状態としている(二④)。事業者間の競争を通じて自由主義経済の市場機能が維持されることから、同法では、これを妨げる私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法等を規制している。
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コラムー法律上の争訟ー
法律上の争訟
司法権の作用する対象を限定するための概念であり、当事者間に具体的な利害の対立のある事件で、かつ、法律的判断として裁判により解決できるもの(裁三①)。政策上又は学説上の対立、法律の抽象的な違憲性についての争い等は法律上の争訟ではなく、原則として訴訟又は裁判の目的となり得ない。
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コラムー紛争解決手続ー
裁判手続
訴訟手続その他の裁判所における手続(外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律5条等参照)
訴訟手続
訴訟の係属から訴訟の終局又は裁判の執行までの訴訟における手続。当事者又は裁判所による種々の効果を伴う一連の訴訟行為から成る。法定の事由に基づき、中止、中断又は停止することがある。
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訴訟
国家の裁判機関に対し紛争の当事者の一方が他方を相手方として法律上自己に有利な解決を訴求し、その相手方がこれに対して争う場合に、当該裁判機関が法律的判断を下して双方の法律関係を確定する手続。裁判機関やその手続の種類等に応じて、民事訴訟、刑事訴訟、行政事件訴訟等の区分がある。[有斐閣 法律用語辞典 第4版]
審判手続
広く審判の手続を指す。特に、①家庭裁判所が家事審判や少年審判のために行う手続、②公正取引委員会が独占禁止法違反事件につき、特許庁が特許審判事件につき、海難審判所が海難審判事件につき、審決、裁決のために行う手続。
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審判
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一般的には、国の行政機関が準司法的手続によって法令を適用する作用。例えば、公正取引委員会の審決手続、特許に関する審決手続がそれ。準司法的手続によって行われるために実質的証拠法則が認められることがある。
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家庭裁判所が家事事件等についてする手続。
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訴訟における審理及び裁判を合わせて審判と呼ぶことがある。
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裁判外紛争解決手続
訴訟手続によらずに民事上の紛争を解決しようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続。司法制度改革の一環として平成一六年に制定された「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(平一六法一五一)により、手続が整備された。
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仲裁手続
仲裁合意に基づき仲裁人が仲裁判断を下すことによって当事者間の紛争を解決することを目的とする手続。仲裁法(平一五法一三八)は、仲裁合意から仲裁判断までの手続(狭義の仲裁手続)のほか、仲裁判断取消しの申立て、仲裁判断の執行決定等についても規定。
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仲裁
一般には、当事者の合意に基づき第三者の判断によってその当事者間の紛争を解決すること。調停と異なり、第三者の判断が当事者を拘束する。①国際法上の仲裁裁判、②仲裁法(平一五法一三八)上の仲裁手続、③労働法上の労働委員会による仲裁、④公害等調整委員会等による公害に係る紛争に関する仲裁等がある。
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あっせん
一般には、うまく進むように間に入って世話をし、とりもつこと。法文上は一時「あつ旋」と表記したが最近では「あっせん」としている。
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労働法上は、調停、仲裁と並ぶ労働争議の調整手続の一つ。労働委員会の会長が指名又は委嘱した斡旋員が争議当事者間に立って、双方の主張の要点を確かめ、その妥協調整を図り、相互の歩み寄りにより争議が解決されるように努める手続(労調二章等)。
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公益事業用地の取得に関する関係当事者間の紛争等の解決のため(収用二章の二等)、また、公害紛争処理法にも(二八~三〇)、斡旋の制度が定められている
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調停
種々の紛争について第三者が当事者間を仲介し、その紛争の解決を図ること。当事者が合意に達することによって解決が図られる。民事調停、家事調停、労働争議の調停、公害紛争の調停、自治紛争の調停等のほか、国際法上の調停もあり、広範囲の分野で多様な調停が行われている。和解や示談と異なり、公平中立の公的機関がその仲介を行う。仲裁と異なり、調停案は当事者を拘束しない。
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紛議調停
紛議調停とは,弁護士会,司法書士会,公認会計士協会などが会員の業務に関する紛議について、会員又は当事者その他関係人の請求により調停をすることをいいます(弁護士法41条,司法書士法59条,公認会計士法46条の8など参照)。
民間紛争解決手続(民間ADR)
民間紛争解決手続とは,民間事業者が、紛争の当事者が和解をすることができる民事上の紛争について、紛争の当事者双方からの依頼を受け、当該紛争の当事者との間の契約に基づき、和解の仲介を行う裁判外紛争解決手続(ただし、法律の規定により指定を受けた者が当該法律の規定による紛争の解決の業務として行う裁判外紛争解決手続で政令で定めるものを除く。)をいいます(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律2条1号)。
紛争解決手続(金融ADR)
紛争解決手続とは、金融商品取引業等業務に関する紛争で当事者が和解をすることができるものをについて訴訟手続によらずに解決を図る手続をいいます(金融商品取引法156条の38第10項)なお,同様の紛争解決手続が無尽業法,金融機関の信託業務の兼営等に関する法律,農業協同組合法,水産業協同組合法,中小企業等協同組合法,信用金庫法,長期信用銀行法,労働金庫法,銀行法,貸金業法,保険業法,農林中央金庫法,信託業法,資金決済に関する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第 57 条第2項の規定によりなおその効力を有するものとされる同法第1条の規定による廃止前の抵当証券業の規制等に関する法律に整備されている(金融庁「金融ADR制度関係条文対比表」,「指定紛争解決機関向けの総合的な監督指針」参照)。
苦情処理手続
労働組合と使用者との間において、労働協約等の解釈・適用をめぐる問題やその他の労働者の日常的苦情を処理するために設けられる手続。民間企業においては、労働協約中に苦情処理機関の設置及び苦情処理手続を定めている例が多い。雇用機会均等法に定める事項に関する苦情及びパート労働法に定める事項に関する苦情については、それぞれの法律にその自主的解決の定めがある(雇均一五、短時労一九)。特定独立行政法人等の職員については、苦情処理共同調整会議の設置が義務付けられており(独行等労一二等)、国家公務員については、人事院がその苦情の処理に当たることとされている(国公三等)。
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仲介
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当事者間に紛争がある場合に、第三者が介在してその解決のために尽力すること。農地法二五条が定める農地等の利用関係の紛争についての農業委員会による仲介など。
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他人のために、ある事項について代理又は媒介すること。金融商品仲介業など。
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調整
一般的には、利害関係を異にする当事者間で発生した主張等の不一致について、調和を図り、解決を見出すこと。労働関係調整法に規定する「労働関係の調整」などはこの意味で用いられているが、そのほか、国民経済的な立場から自由な企業活動に制限を加えて一定の秩序に従わせる場合等にこの語を使うことがある。
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